今回は甲状腺機能の低下症とむくみについてお伝えいたします。
甲状腺機能低下症とは
甲状腺とは扁桃腺の奥、そしてやや上に位置すること臓器です。甲状腺は代謝に関わる大きな働きをしているホルモンを司る臓器です。甲状腺機能低下症とは簡単に申し上げますと代謝の機能が低い状態にあるということです。そしてこの30〜40代の女性に多くみられる病気です。
甲状腺機能亢進症との違い
逆に甲状腺機能亢進症とは代謝の機能が高い(高すぎる)状態のことといえます。皆様もバセドウ病等の病名を聞いたことがあるかと思います。
ではなぜ甲状腺機能低下症になるのでしょうか。この病気は自己免疫異常によるものといわれています。シンプルに表現しますと、自己免疫とは体のなかに入った異物を撃退するための働きです。この機能がなんらかの原因で誤作動をおこしてしまうのです。
むくみと甲状腺機能低下症
むくみと大きく関係があるのは、亢進症状ではなく低下症となります。
むくみとは浮腫(ふしゅ)ともいわれます。健康な状態ならば、たまらない場所に水がたまってしまう状態です。そして甲状腺機能低下症によるむくみは「粘液水腫」いいます。
甲状腺機能低下症にみられるむくみは独特の特徴があります。この「粘液水腫」は水分が貯まっている感じではありません。指で皮膚を押して凹ませてもすぐに元に戻ります。また、朝起きた時に手や顔がこわばったようになります。そして「特有顔貌」とも表現されるのですが、顔のむくみがひどいと瞼がむくみ、唇が厚くなったり舌が大きくなってしまうこともあります。そして咽頭(喉の奥)がむくむこともありますので、そうすると声が低くなってしわがれ声になります。外見が老けて見えてしまうために更年期障害や老化が早まっていると思ってしまうかたも多くいらっしゃるようです。
先に述べましたとおり甲状腺は代謝に関わる臓器ですので全身(内臓の臓器も含めて)がむくみます。わかりやすい症状は、新陳代謝が低下して食欲減退になり、食べている量が減っているのに体重が増加するというものです。胃腸の働きも低下するため、胃が膨れるような膨満感があり便秘になりやすくなります。
そして暑い夏の日であっても汗をかかないようになります。そして寒さをより辛く感じるようになります。
いわゆる基礎代謝が低下した状態が継続することで様々な症状が現れるのです。
そして心臓を包んでいる筋肉にも水がたまってしまうこともあり、心臓が膨らんで大きくなることもあります。心臓を包む筋肉の働きが弱まると、全身に血液を送りだす力が弱まります。血液には水分や栄養素が含まれており、心臓は全身の臓器に血液を送ります。そして代謝された老廃物を回収した血液を、再び心臓に戻さねばなりません。そのポンプの役割が果たせなくなると全身の血液の流れ(循環)が悪くなり全身のむくみをより強めてしまいます。またこの症状から心臓や腎臓、肝臓の病気と間違われることもあります。
更年期障害との違い
特に女性の場合は甲状腺機能異常(甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症)と、更年期障害と発症の年齢や症状が似ています。そのため、甲状腺機能の異常を更年期障害と勘違いしてしまうこともあります。
甲状腺機能低下症と更年期障害における、似ている症状を列記します。
- 頭痛
- 不眠
- めまい
- うつ傾向
- 記憶力低下
- 関節痛
- 生理不順
などです。
全身のむくみ、食欲がないのに体重が増える、顔つきがかわる、等の症状が現れ他場合には、「更年期障害だろう」「しばらく様子を見よう」などと自己判断で放置はしないようにお勧めいたします。
先にも述べましたが、腎臓などの命に直接関わる臓器にも影響を与える病気ですので自己判断での放置は非常に危険です。
おかしいな、と思ったら近所の内科受診をおすすめします。内科と並列して「内分泌内科」と看板があがっているクリニックの場合は、内分泌内科の専門医の先生が開業しています。クリニックでは出来ないような検査や入院による加療が必要な場合には、大学病院や総合病院等の病院を紹介してくれます。
更年期障害と間違えやすいため、医師の問診には適切に応えられることが大切です。
自分の気になる症状はいつから始まったのか、身体のどの部分がむくみがひどいのか、意欲減退、食欲減退は普段の生活を送ることができないくらいにひどいのか等、メモに書いておくことをおすすめします。
執筆者プロフィール
保健師 看護師 資格有り
看護師経験 :消化器内科外科
保健師経験 :社会福祉施設、保健所(母子保健担当)、病院併設健康管理センターにて産業保健指導担当
ココナラにて健康相談、医療健康記事執筆サービス提供。ご依頼はココナラ内から【保健師 YWFH】まで。